FEATURE SHIMANO インタビュー

シマノ流 自転車×○○提案で
大阪観光を盛り上げる

インタビュー:シマノスクエア 蔭山さん・浅野さん

自転車部品の製造で世界トップシェアを誇るシマノ。
金属加工技術の強みを活かした釣具メーカーとしても、世界中の釣り人から熱い支持を受けています。

世界有数のモノづくりの会社である一方、
自転車・釣り文化の発信を目的にグランフロント大阪で「シマノスクエア」を運営中です。

今回は、シマノの元プロダクトデザイナーであり、シマノスクエアの運営責任者である蔭山さんと浅野さんに、自転車の魅力や新しい楽しみ方、大阪の自転車の楽しみ方をお伺いしました。

楽しいことを人と共有したい、
シマノのアイデアマン
― 蔭山 智彦 かげやま ともひこ

1971年生まれ 京都府出身 現在貝塚市在住 17歳の頃、通学用に買ったロードバイクにより自転車の世界を知り、シマノブランドに憧れ、プロダクトデザインを学び、株式会社シマノ デザイン室に入社。
入社後は主にMTBのデザイン、その後はスノーボード用ブーツやビンディング、自転車用シューズやアパレル、釣り用品等のデザインに従事し、2021年7月よりシマノスクエアに勤務。趣味はMTBと釣りとスノーボード。
仕事と趣味が100%同じだった事を生かし、常に消費者目線を忘れないように心掛けています。

新しいモノやコト体験の創造を
楽しむクリエイター
― 浅野 健介 あさの けんすけ

1976年生まれ 岡山県出身 1999年より大阪府民(堺市民) 15歳の頃に父親に買ってもらったマウンテンバイクがきっかけで自転車の世界に飛び込む。
高校生の頃は自転車レース活動と美術部の活動に没頭。神戸芸術工科大学卒業後、株式会社シマノ デザイン室に入社。
自転車デザイン、釣具デザイン、釣具生産技術、釣具販売促進部門を経て、2021年1月よりシマノスクエアに勤務。
趣味はサイクリングや釣りはもちろん、ドライブや写真撮影など広く浅くいろいろ楽しむ。

シマノスクエアとは、自転車の楽しみ方を教えてくれる場所

ーーシマノスクエアには今回はじめて伺いました。外観も店内もすごくスタイリッシュで、製品の展示が美術館みたいですし、1日中ずっと居られますね。

蔭山さん:ありがとうございます!

ーー製品がたくさん展示されていますが、シマノスクエアはどういった場所なのでしょうか?

浅野さん:シマノスクエアの基本コンセプトは「自転車と釣りの文化発信」なんです。製品のユーザーであるお客様と、直接対話できる場として2017年にオープンしました。今では 自転車や釣りの楽しみ方を提案する窓口となっています。シマノは基本的にモノづくり企業ですが、製品だけでなく体験も提供しようと取り組んでいます。

ーー自転車や釣りの遊び方を提案する文化発信基地なんですね! 具体的にはどのような活動を?

浅野さん:自転車と釣りの楽しみ方をどんどん共有し、自転車人口・釣り人口を増やしていけるよう、 アウトドアイベントや店内講座を企画しています。営利目的ではなくて、イベントなどを通して結果的にシマノのファンになっていただいたり、製品を使っていただいたりする循環が生まれることを期待しています。

蔭山さん:ここに来られる方はサイクリストや釣り人も多いですが、いわゆる上級者向けではなくて、初心者の方やこれから興味を持たれるであろう潜在層の人たちに届くような内容に照準を合わせてるんです。自分に無理してまでチャレンジするようなハードルの高いものではなく、今のライフスタイルから一歩踏み出してみたくなるイベントを企画しています。

自転車の魅力は、自分のペースで探検できること

ーー実は私、自転車には疎くて……。普段、家から駅までの道のりでママチャリに乗るくらいなんですよね。お二人にとって、自転車の魅力って何なんでしょうか?

蔭山さん:自転車のスピードは、歩くよりは速いですが、車よりは遅いですよね。だからこそ、散歩気分で色々なものを発見、体験しながら楽しんでいただけるのが良いですよね。我々はそれを「散走」と呼んでいます。同義語として「ポタリング」という呼び方もされています。

浅野さん:私も同じですね。自転車の良いところは、地域の文化に触れながら街を探検できることだと思います。車では通れない道でも、自転車は許可されるところが多いですよね。立ち止まって「あれ、何これ?」で戻れますし。それでいて歩くよりも長い距離を移動できますし、自転車は快適なツールだと思います。

ーー徒歩か自転車でしか入れない細い路地もありますもんね。それに、電動アシスト付きであれば、歩くより断然ラクに移動できます。

蔭山さん:私は普段、電動アシスト付マウンテンバイクに乗ってるんですけど、乗り慣れてしまうと、ふつうのママチャリに乗る時、アシストがないとわかっていても、漕ぎ出しにアシストしてくれないとちょっと苛立ちを感じますね(笑)。ママチャリと呼ばれる軽快車やマウンテンバイク、それから自転車で旅を楽しめるトレッキングバイク。この3つに関しては、今の法律にマッチしながらアシストの価値を感じていただける自転車かなと思います!

要素の掛け合わせで
新しい自転車の楽しみ方を提案

ただ自転車を走らせるだけではない、新しい自転車の楽しみ方を提案しているシマノ。もっともっとユーザーが面白い体験をできるように、自転車×釣り、自転車×キャンプ、自転車×舟など自転車と何かを掛け合わせた提案をし、無限の可能性を追求しています。

要素の掛け合わせで新しい自転車の楽しみ方を提案

ーー自転車のイベントを企画される際、どのようなことを考えておられるのでしょうか?

蔭山さん:企画・提案するときは「自転車に何を組み合わせたら面白いか」を軸にいつも考えていますね。最近はネットで簡単に情報が手に入りますし、様々な体験をされている方が多いので、みなさん目が肥えています。なので、決められたコースをただ走るだけではなくて「自転車を舟に乗せられますよ!」とか、「普段乗せられないような自転車を電車に乗せて遠出しませんか?」とか、自転車と何かを掛け合わせる視点を持ち続けてますね。今までに考えつかなかったものを組み合わせて新しいものを作ることで、皆さんの心に響くと思っています。

ーーデザイナーをされていただけに、まさしくデザイン思考ですよね。具体的な企画としてはどのようなものがあるんでしょう?

蔭山さん:いま打ち出しているのは、RIDE&FISH(ライドアンドフィッシュ)です。

ーーライドアンドフィッシュ?

蔭山さん:ええ。自転車で釣りに行ったらどうなるかを考えているんですよ。釣り人って車で移動することが多いですが、駐車場の問題が付き物で釣り人の悩みの種でもあるんです。しかし自転車を使えば、機動性が高まって、いつの間にか行動範囲が広がっていたりします。さらに電動アシスト技術を使えば、ますます広がっていくんですよね!

ーーこちらの自転車は、釣り竿が後ろに刺さってますが?

浅野さん:こちらは、自転車で釣りに行きたい人のあいだで、少しずつ人気が出ている自転車なんです。

ーーえ、これで釣りですか!? スタイリッシュでめちゃくちゃお洒落ですね!

浅野さん:用途に合わせて対応可能なアシストバイクをメーカーさんからお借りして、シマノの釣具と組み合わせたカスタマイズ提案をしています。釣り専用に作られた自転車ではないんですが、それぞれの製品がアウトドアシーンにマッチするようにデザインされているので、自然と調和していますよね。

蔭山さん:実はこれ、僕がデザインしたんですよ!

ーーそうなんですか!色味もぴったりですね!

浅野さん:こういう製品があるのか問い合わせを受けるくらい、カラーコーディネートもバッチリ仕立てることができました。あるご夫婦がご来店頂いた際に、このコンセプトバイクにとても共感してくださり、旦那さんは「これめっちゃいいやん!淀川で釣りをするときに活躍しそう」と喜ばれ、奥さんは「普段のお買い物でも使えそう」とご好評いただきました。釣り好きのお父さん専用自転車ではなくて、ご家族みなさんで利用してもらえるところも響いているのかなと思いますね。

ーーお洒落で、普段使いもできますね。こちらのアシストバイクは用途に合わせて対応可能とのことですが、釣り以外だとどんな用途で使われているんでしょう?

蔭山さん:こちらの自転車はキャンパー層に向けても提案しております。シマノでは釣りのほか、キャンプと自転車の掛け合わせにも取り組んでいます。2022年3月に自転車フェス「CYCLE MODE RIDE OSAKA 2022」が開催されて、そこで初めてキャンプの内容でシマノもブースを出してみたんです。

ーーキャンプと自転車? あまりイメージができないんですが……。

蔭山さん:私たちも自転車をお好きな方は、果たしてキャンプにも関心が高いのだろうかと疑問に思っていたんですけど、ブースが大盛況に終わり、そこで自転車とキャンプの親和性を確認できました。

ーーへぇ、そうなんですね!

蔭山さん:みなさんキャンプに行かれたら、朝のチェックアウトからお昼までの2、3時間は時間が空いているとわかったんですよ。そこに何かしら一味加えたいと思っているキャンパーさんは絶対いると思っていました。キャンプだけして帰る、ご飯を作って寝るだけではもったいないじゃないですか。大自然まで来たなら何かしら特別な体験をしてほしいと考えているので、そこに自転車を組み合わせられないかと考えました。

ーーキャンプに自転車アクティビティが加わると、さらに楽しい体験になりそうです。

蔭山さん:今後も自転車との親和性を確かめながら、自転車と別の体験の掛け合わせを追求していきます!

大阪サイクリングのススメ

地図アプリが示してくれるサイクリングルートでは、信号が多かったり、車や人通りが多かったり、自転車を楽しむのに最適なルートがわかりずらいこともあります。普段からサイクリングを楽しんでおられ、自転車のプロであるお二人に、初心者でも楽しめるお勧めのコースを教えていただきました。

大阪のお勧めサイクリングルート4選

ーー大阪のお勧めサイクリングルートを教えてください。

蔭山さん:初心者から上級者まで幅広くお勧めできるのは淀川大和川沿いですね。信号も車もないので比較的安全ですし、淀川であれば京都まで行きやすいです。信号がない分、車より全然速く移動できるんですよ。先日私も走ってきたんですけどめちゃくちゃ安全で、気持ちよくて。なんせ車がいないって本当に最高なんですよ。

浅野さん:今、力を入れているのは堺散走です。堺にシマノが本社を構えているのが理由の1つですね。堺の文化や歴史を知ることができる機会を提供できたらと思っております。具体的には、伝統産業である「堺刃物」の製造工程をご覧いただき、2022年3月に新しくオープンしたシマノ自転車博物館にも、ご案内するといったコースです。文化を学びながら楽しんでいただけるプランを考えています。

蔭山さん:毎年4月には「桜散走」を企画しています。淀川沿いのサイクリングと遊覧船を掛け合わせたお花見プランです。何でも掛け合わせが好きなんですよ(笑) 。淀川で春風を感じながらサイクリングした後、遊覧船に自転車を積んで、また違う角度から桜景色をのんびり楽しんでいただけます。おかげさまでサイクリングイベントはご好評をいただいております。

堺から、大阪をもっと
盛り上げていく

ヨーロッパほど自転車のインフラ整備がされていない大阪。自転車が走りやすい環境とは言いがたいものの、課題を乗り越えるため、複数の企業・自治体が協力しながら、自転車文化を盛り上げる取り組みをしています。現在行っているシマノの取り組みと展望について語っていただきました。

地域の自治体、企業と協同で自転車カルチャーを盛り上げる

ーー自転車文化の普及について、ほかの地域でモデルとなるようなところはありますか?

浅野さん:自転車アクティビティでいうと、茨城県の土浦駅がすごく発達していますね。自転車をエレベーターに乗せられたり、レンタルできたり、自転車自体を購入できるショップがあったりします。近隣のホテルは、客室まで自転車を持ち込めるような部屋もありますし、星野リゾートさんではプレミアム感のある宿泊プランが組まれていて、あの手この手で盛り上げられています。

ーー大阪も同様に、自治体だけでなく地域の企業さんとも協同で盛り上げていければいいですね。

浅野さん:そうですね。堺の伝統産業でもある、注染手ぬぐいの株式会社ナカニさんの「にじゆら」ブランドとのコラボの手ぬぐいの製作や、注染体験ができる散走の取り組みもすでに行っています。その他にも、堺打刃物の企業やお茶を扱う企業と、特別な体験ができる散走イベントなどのコラボも進めています。大阪堺市の異なる地場産業との結びつきを深め、釣った魚を美味しくさばいて食べたり、自転車で公園に出掛けて野点を楽しんでみたりと、自転車や釣りの楽しみにとどまらない「掛け合わせ」のご提案で、堺ひいては大阪の魅力を発信できるように取り組みたいと思っています。

ーーすでに地域の企業さんとも協力して取り組まれているんですね。2025年に大阪・関西万博も開催されますが、今後の展望を聞かせてください。

蔭山さん大阪各地から万博会場まで自転車で行くのも良いのではないでしょうか。現在、水上交通や空中交通環境などの整備が進められていますが、既存の交通インフラとして身近な自転車を利用した移動手段がさらに見直され、道路整備や鉄道との連携が高まることを期待しています。国内外から大阪に来られる方が大阪各地を自転車で気軽に旅をしながら、大阪に触れ、万博を楽しんでもらえたら良いですね。

ーー万博に自転車で行く発想がありませんでした…。面白そうで良いですね!

蔭山さん:アシストバイクやシェアバイクを使えば、体力や脚力に自信のない方でも利用して頂けますし、健康促進にも繋がると思っています。渋滞を避けて普段と少し違う道を進むと、必ずと言っていいほど新しい発見や出会いが期待できるのも自転車の良いところなんですよ。自転車インフラの整備など課題はありますが、楽しそうにしているところに人は集まってくると思いますし、楽しいコト体験の提案でもっと大阪を発信して盛り上げていけたらいいですね。

SHIMANO SQUARE

株式会社シマノの歴代製品や、自転車文化・釣り文化の事例を紹介するパネルや動画などの展示している店舗。自転車専門、釣り専門のコンシェルジュが定期的に在店し、自転車や釣具の選び方、ご要望に合わせたサイクリングコースや釣り場情報のご提案しています。カフェも併設しており、書籍を読みながらオリジナルスイーツも楽しめます。

住所:大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル4階
open:11:00~19:00(ラストオーダー/フード 18:00 ドリンク18:30)
close:月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)

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